2017年の発売以来、マイナーチェンジを繰り返しながら売れ続けているロングセラー、「スウィングスタンド」(現行品はFSWS-2746MT)。前回取り上げた「ホームベース・ワイド」「アローベース」(⇒こちら)同様、こちらもシンプルながら、使い勝手の良い商品だ。そして、ユーザー側で工夫の余地が多くある点も、人気の秘密となっている。ロングセラーに歴史あり。当初の製作意図とは違った使われ方が一般的になっているのも、フィールドフォース製品の特徴なのかもしれない。
「紹介したい」1ユーザーがいまや大エースに
「2019年あたりのことでした」
フィールドフォース社長・吉村尚記が語り始めた。
「長曽根ストロングスの辻本さんから、連絡がきたんです。吉村さんに紹介したい選手がいるんです、と」
全日本学童マクドナルド・トーナメントで8度優勝を誇る大阪の強豪学童野球チーム、長曽根ストロングスと、吉村との付き合いの始まりは、2015年にさかのぼる(⇒こちら)。その長曽根で当時、ヘッドコーチをしていた、現監督の辻本茂樹さんから、吉村のところに連絡があったというのだ。

「息子の直樹君(現在、ルートインBCリーグの茨城アストロプラネッツでプレーする辻本直樹選手)の駒大苫小牧高校時代の先輩で、当時、駒大苫小牧大でプレーしていた伊藤大海というピッチャーを紹介させてほしいと」
辻本さんを通して電話番号を伝えると、後日、吉村のところに伊藤投手から電話があったという。
「結局、タイミングが合わずに、実際にお会いすることはできなかったんですけど、商品の感想などを聞かせてくれて。私からは、こんな練習ギアがあれば、なんていうリクエストや悩みがあれば、いつでも連絡をしてほしい、と話したんですよね」
その伊藤投手がいまや、日本ハムの絶対的エースとして活躍しているのはご存じのとおりだ。
このときのやりとりが、吉村の脳裏に今も強く焼き付いているのは、伊藤投手が日本を代表する大投手になったから、ということばかりが理由ではない。
「伊藤投手が使ってくれていたのが、このスウィングスタンドだったんです。彼は当然、ピッチングの練習に、これを使っていてくれたんですよね。スウィングスタンドって名付けられた商品なのに」
伊藤投手が独自のトレーニングを模索する中で、ピッチャーのための練習ギアとして、スウィングスタンドを選んでくれた、というところがポイントなのだ。
スウィングスタンドの開発経緯は…

もともと、スウィングスタンドは人気野球ユーチューバー・クーニンさんによる、フィールドフォースへの持ち込み企画として製作された経緯を持つ。
クーニンさんが自身のYouTubeチャンネルで中学硬式クラブチームの強豪「京葉ボーイズ」を訪れた際、同チームがバッティング練習の補助器具として使っていた、角度付きの足置き台を製品化できないだろうか、と吉村に依頼が来たものだった。
「それまでも、段差のある場所や、台を使って軸足と踏み出し脚に高低差をつけ、バットを振るといった練習法は一般的に知られていましたが、角度をつけるという着眼点は新しい、と思いましたね」
吉村が当時を回想する。
軸足をこの台に置けば、傾斜があることにより、スムーズな体重移動ができると同時に、軸足側の膝や腰を開かずに打つ感覚を養うのに役立つ。踏み込み足をこの台に置くようにステップすれば、やはり開きを抑えて「壁」をつくり、力強いスウィングを体得するのに役立つ、というわけだ。

製品化のリクエストに対して、まず「そのまま作っても面白くない」と考えるところは、いかにも吉村らしい。フィールドフォースならではのアイデアを付け加えて製作されたのがスウィングスタンドなのだ。
まずは持ち運べること。スチール製の折り畳み式とすることで、手軽に移動できるようにした。スチール製にしたことによる適度な重みも、安定性を担保することに役立っている。底部はフラットな面ではなく、四隅にゴムのポイントを付けた。「面」ではなく「点」で接地させることにより荷重を集中させ、容易に動かないよう固定することに成功している。また、接地部をゴムにしたことにより、室内から屋外まで、場所を選ばずに使えることも大きなポイントだ。
また、組み立て時にストッパーを受ける溝を複数設けることで、角度を段階的に調整することが可能となり、ユーザーそれぞれに合った角度で使用できるようにもした。
こうして世に送り出されたのがスウィングスタンドだった。
いまだったら…「マルチスタンド」!?

スウィングスタンドは当初の発売時から、2度、モデルチェンジをしている。最初のリニューアル時には、当初、梨地塗装によりザラリとしていた表面の加工をなめらかな塗装面にし、アップシューズだけではなく、スパイクを履いていても使えるようにと、着脱式の人工芝のシート(別売り)を発売し、ぴったりと貼り付けられるようにした。
2度目の仕様変更は昨年。一回り小さく軽量になり、持ち運び用の取っ手として、ポリエチレン製のベルトが取り付けられたことで、持ち運びがより便利になった。

今では、オフィシャルホームページ上の商品紹介ページでも、ピッチング練習での使用が紹介されている(⇒こちら)。
「いま、新たに開発して商品として発売するとしたら、『スウィングスタンド』ではなく、『マルチスタンド」とでも名付けていたかもしれません」
吉村が言う。
「でも、この商品はスウィングスタンドとして、多くのユーザーがピッチング練習にも使ってくれている。すでに、この商品は独自の歴史を刻んでいるんです。だから、今後も商品名を変えたりはせず、スウィングスタンドはスウィングスタンドのままでいいのだと思っています」
逆説的に言うなら、「使い方はユーザーが決めるもの」ということだろうか。フィールドフォースの商品は、アイデアを具現化すべく開発されたものが多いだけに、その傾向がより強いのかもしれない。
「これから先、まったく別の競技で、スウィングスタンドを練習に使ってもらえるケースだって、あり得ない話ではありませんからね」
吉村はそう言って笑うのだった。
ユーザーの声を製品開発に!

スウィングスタンドを発売した9年前、2017年は「インスタ映え」が流行語大賞を獲得した年でもある。今となっては「一昔前」の感覚もなくはないが、現在では、もはや流行ではなく、日常生活の一部としてSNSが存在する。
吉村は自身のインスタアカウントで、毎日のようにフィールドフォース製品に関する情報を発信している。最近ではむしろ、すでに発売中や新発売の商品よりも、開発中の商品について情報を出すことが多い。そうしてフォロワーや、投稿を見た人たちの反応を開発に取り入れることもある。
「以前から多いのは、『ソフトボール用もお願いします』という意見です。防球ネット類など、以前は『軟式用』『硬式用』に分けたものがほとんどでしたが、新たに発売する製品については『硬式、軟式、ソフトボール兼用』というものを増やしています。これはそうした声に応えた商品の一例です」
と吉村が説明する。
「マシン類については、ボールの大きさがネックになります。これまで硬式球、軟式球など、さほど大きさが違わず共通で使えていたものも、ソフトボール用をと考えると、1から作らなければならないものが多い。ハードルはそれなりに高いのですが、ソフトボールはアメリカでも人気があります。今後、商品化はしていきたいと思っているんです」
あらかじめユーザーの声を取り入れた商品開発、これもまた間違いなく、社是である『プレーヤーの真の力になる』という考えの、ひとつの形態と言ってよいのではないだろうか。